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ワンダヴィジョン

ディズニー+で配信されているマーヴェル・シネマティック・ユニヴァース(MCU)作品。噂を聞いて見たい見たいと思っていたのだが、何せ有料なもので…数ヶ月我慢して、ようやく時間がとれそうだったので、鑑賞。

このドラマの本質的な部分については、Youtubeのシネマ野郎チャンネル「てらさわホーク×御代しおり ぼんやりワンダヴィジョン」でほとんど語られていて、私が付け加えることはほとんどない。曰く、

  • このドラマはMCU映画見てる人前提
  • こえーよ。不気味
  • 時間が30分というのが丁度いい
  • MCUの今後にとって超重要な作品

ということだ。付け加えるなら、このドラマシリーズの前半は、アメリカのシットコム構成になっていて、客の笑いなどを入れつつ、とことどころに違和感を生じさせるものになっていて、(以下ネタバレ)これはワンダの妄想なのでは…?と気付く人は気付く展開になっている。特に、映画で既にヴィジョンが亡き者になっていることを知っている観客なら。それが早々に4話で明かされると。あとは、いかにワンダの妄想、というか現実改変能力を止めるかということになっていく。ワンダが何をしているかというと、町一つを住民ごと改変してしまって、自分の世界に住まわせている。住民にしてみれば否応なしにつきあわされている訳である。

ここまでのところからして、ワンダ、全然善人ではない。クライマックスでは、アガサ・ハークネスという適役が正体をあらわし、対決になるのだが、はたしてそれを通過しても正義のヒーローではないし、最後いいなりにさせてた住民にも直接謝ったりはせず、最後には逃げだしている。でワンダは先のアガサとの戦闘中に「スカーレット・ウィッチ」として覚醒しているのだが、最後の最後のシーンではその2つが分裂した状態で描かれる。先の御代しおり先生曰く、ワンダはMCU随一のメンヘラとして有名なんだそうで、これまでの映画シリーズでは描かれていなかった彼女の本質が、今回初めて描かれたということなんだろう。もっとも、これについては私は否定的ではない。そんな正義のヒーローばっかでもね。特に前半の現実だか夢だかが曖昧なところは私は大好物なので、それだけでもこの作品は推したい。

キャプテン・マーベルに登場したモニカ・ランボーが登場し、今後もシリーズに絡みそうなのもなんか楽しみである。

あ、この作品、謎はだいたい解決しているのだが、ただ一つ、ヴィジョンの遺骸をもとに再構成された白ヴィジョンは記憶を取り戻して出ていったが、その後どうなった?放置されていたけど、これも次のシリーズへの布石か。

ジョーカー

最初の私のこの作品に対する期待度はそれほど高くなかった。「あー、今度は悪役シテンで1本作るのね。そういう観点もあるよね」といった、わりと冷めた受け止め方であった。若干アメコミ映画にも食傷してたのかも。加えて、今回は事前知識がどんどん入ってくる。特に、アカデミー主演男優賞レースでタロン君と一騎打ちだとか、ジョーカー役のホアキンはこういう基地に入れない役は十八番だからタロン君にあげるべきとか。私も先にロケットマンを観てそう思ったし。

といった、もろもろの設定されたハードルがあった訳だが、それらを軽く飛び越えてきたね。売り文句にもあるがまさに衝撃と言ってよかった。だいたい傑作の映画は、最初のシーンでだいたい分かるもの。今回も、最初にピエロのメイクをしているホアキン(アーサー)の横顔のアップがうつって、そこに描いたメイクの涙が垂れてきた時、私は確信した。とにかくこの映画は絵がいい。見たこともないようなゴッサム。ごみだらけなのになぜか美しい。で、ホアキン。私はそんなに彼の演技を見てきた訳ではないが、ちょっと凄いと思いましたよ、素直に。 この辺からネタバレだが、これ、冷静に考えてみればジョーカーにあまり理はないんだよね。 だって、いくら電車の客がイヤな奴だったり絡んできたといっても、殺されそうだったかどうかは分からないじゃん。でもいきなり殺しちゃったからね。そこを、アーサーの方を正当化するようにもっていく演技と演出。これを、現代にまさにマッチした格差の問題をからめて、ジョーカーをヒーローにまつりあげていく。もっていき方も見事。

主人公アーサーは、精神が不安定で、薬を何種類も処方されている。しかも、市の助成打ち切りで処方もストップ。ということは、この後は私大好きの、信用ならない語り手映画になっていく。恋人の件は、不幸なアーサーにしてはあまりにもうまくまわりすぎるので、どうもあやしかった。それに、バー?でアーサーが出演していて、最初まったく笑いがとれなかったのに、突然カットが入ったように客席の笑いが起きるシーン。そのことを敷衍すると、他にもあやしい点が。尊敬するマレー・フランクリンの客席にいたアーサーが声をかけられて壇上に上るシーンがあるが、これは確実に妄想くさい。なので、その後マレーのTVから出演オファーが来たのも、妄想ではないかと思った。

これ、いわゆるユニバースの流れに入れないからある程度自由に作れたのもよかったんだと思う。

シャザム

これは、「アベンジャーズ /エンドゲーム」の直前に観た。この感想は、エンドゲーム鑑賞後に書いているので、正直記憶が薄れがち。だが、あまり期待していなかった分、意外に楽しめた。今までのDC(ザックシュナイダーのジャスティスリーグ系の)神話的どシリアス世界ではない、肩の力を抜いて楽しめる1作ではあった。もっとも、終盤になるにつれ、どんどんシリアスになってしまうのはやむなしか。主人公はあっけらかんとしていて、こういうテイストのスーパーマンなら柳下先生は大満足なのでは、と思う。ただちょっと気になったのは、シャザムは主人公の少年が魔法で、大人に変身するというのだが、少年の方がすごく陰キャなのに対し、大人の方がえらく明るいしおしゃべりなので、あまり連続性が感じられない。むしろ、冒頭の、ヴィランであるシヴァナの子供時代の方が、シャザムの少年時代に自然につながってるように見える。これは意図的に作ってあるんだろうが。

以降はネタバレ。この物語は、主人公にとって、子供の時に生き別れた母親というのが、宝物とみせかけマクガフィンになっていて、現実を見せられた主人公がマクガフィンを捨て、真の成長を見せるところはなんか王道のビルドゥングスロマンっぽくてよかった。この時点での感想ならこんなものだったのだが、エンドゲームのギャグのふりきれっぷりを観てしまうとなあ。