「ドキュメンタリー」タグアーカイブ

コレクティブ 国家の嘘

このドキュメンタリーは、まず、ルーマニアのとあるライブ会場での火事のシーンからはじまる。このシーンも十分こわいのだが、問題はそこから展開して、この火事で病院に収容された患者が、軽傷者も含め異様にバタバタと死んでいるという事実に気付いたスポーツ新聞の記者が、調査をしていくという流れになっていく。すると実は、病院で使われている消毒液の濃度が、規定よりはるかに低い。しかも常態的にそうであることが分かってくる。これはこわいね。

それでなんやかんやあった後、現内閣が倒れ、テクノクラートからなる暫定内閣が発足。保健省大臣には、この問題を追及してきた人物が就任。これで問題が解決、と思いきや、ことはそう単純にはこばないのであった…これだけでも絶望的なのだが、これは事実だからネタを割ってしまうと、この後にあった総選挙で、事件当時の与党(社会民主党)がなんと、過半数に迫る票を獲得。要はこの問題がまったく世論にひびいてなかった訳で…これはどんなホラーよりも絶望的だよね。かつて、『はりぼて』を観ておちいった絶望感に共通するものがある。日本とて決して対岸の火事ではないはずであるし。むしろ、ジャーナリズム的には遅れをとっているかもしれない。

由宇子の天秤

いろいろなとこで激賞されているので、ユーロスペースに見に行った。上映館が少ないせいか、人気なのか(たぶん両方)、ほぼ満席であった。

映画の方はというと…長かった(2時間半以上?)にもかかわらずその長さはあまり感じさせない。いや、嘘。早く終わってくれないかなと思っていた。理由は、終わりに行くにつれどんどん辛くなっていって、そこから早く解放されたいと願ったから。つまり主人公に同化してしまっている訳だ。ドキュメンタリータッチの映画でこういう体験は珍しい。

(この辺からネタバレ)なぜ辛いかというと、主人公はある問題を「天秤にかける」つまり決断することをどんどん先延ばしにしているからだ。そこで分かる通り、主人公は決していい人間ではない。もちろん表向きは妊娠してしまった塾の教え子にやさしくはする。だがそれはおそらく罪悪感(父親が妊娠させてしまった。更に子宮外妊娠の可能性が高く、母体が危険であるにも関わらず、そのまま放置している)にかられてのこと。その辺ふまえると、教え子が入院した時に時計をあげようとする一方、頭をなでようとして止めるという仕草がリアルに感じる。

この主人公を演じた瀧内公美さんはすごくよかった。あと、教え子の父親(梅田誠弘)のクズっぷりとか。

なぜ君は総理大臣になれないのか

現・立憲民主党議員の小川純也氏を10年以上にわたり追ったドキュメンタリー。20代の若い頃から、子供も成長しておっさんになった今までの変化が見れるのも興味深い。よくこんな長い間追えたなと関心。しかし、これは実は人を追っているように見えて、その背後にある構造(まさにタイトルが示すような)をあぶりだそうとしている、そっちがメインの話と読みました。とはいえ、クライマックスの、民進党が希望の党に合流するにあたって、希望の党の公認をもらうかですごく悩んでいるあたりが、チラ裏見ているようでそこが必見ポイントだったりはするんだが。

はりぼて

2016年に富山市議会で起きた政務活動費の不正受給問題を追求したドキュメント。きっかけは、唐突に市議会議員の報酬引き上げ案が議会に提出され、通ったこと。富山といえば、自民党員の割合が日本一、とうぜん 議会も自民党が多数支配という保守王国。そんな議会だから、自分たちの報酬なんて上げ放題。提案する議会のドンは、「政務活動費だけではやっていけないから…」と言うが、じゃあその政務活動費ってどう使われてるの?と地方テレビのキャスターや記者が調べはじめたというのがきっかけ。ところが調べてみると、計上されている報告会が開催されていないらしい、ばかりか、その印刷代の枚数も会場の広さに比べ異様に多い。しかも、どうやら白紙で領収書を出してもらっているらしい…

というところをどんどん追及していくと、出るわ出るわ、そのドンは不正が発覚して謝罪、すると次は市議会議長、議長がやめてその後任の議長、と、次から次へ後任が出てきては不正で辞職…このたたみっけぶりに、「またかい!」と最初は笑っていたが、実はこれ、どんな地方議会でも起きている問題な訳で…でも、今回はたまたま熱心な記者が取材してくれたおかげでここまで明るみに出たけど、そうでなかったらと思うとゾっとするし、まだまだいろんなところでこうだと思うと更にソっとする。原因は、有権者によるチェックと選挙による洗礼が正しく機能していないからで、明らかに責任の一端はそういったことに無関心な我々にある。でもなあ。メディアが伝える手段がなかったり、権力のチェックとして働いてくれないとこれもきつい。どうしたもんかね。