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残酷な神が支配する(萩尾望都)

この作品、20年くらい放置していた作品。当時は連載をおっかけていたのかな?連載でよけいに感じるのだろうが、読み続けるのがつらくてつらくて途中で投げだしてしまい、その後、気にはなっていたものの、手をだしかねていたもの。今回、電子書籍で一気買いして、再挑戦となった。

当時は、何がつらかったのかな?この作品、萩尾師匠が男性同士のセックスを初めてまっ正面からとりあげているのだが、それがもろ児童虐待で、それが延々と続くのが読んでいてつらかったのかな?(ここからネタバレ満載注意)確かに、萩尾師匠の筆致はいやらしく、虐待側のグレッグは同様のテーマを扱っている「風と木の詩」に登場するオーギュストと比肩できないくらい恐しい。しかし、今回読み直してみて、このグレッグの退場は気抜けするほど早い(いや、正確には退場しないのだが)。で、その後は親を殺されたイアンのジェルミに対する疑いと憎悪が延々続く…読んでいた当時はおそらくこの途中でドロップアウトしたと思われるのだが、この解決も実はあっさり、全20巻の半分くらいでつく。しかし物語はそこでグレッグとイアンがくっついてめでたしめでたしのような、素直なハッピーエンドにはならない。うまくいくようで二人はすれ違い、そのたびに死んだはずのグレッグが蘇えり、悪魔のささやきをする。連載で読んでいた方もこの辺がつらかったろうなと思う。やがて物語は決定的な転回点を迎える。ハムステッドの「崖」の場面である。そのシーンはどうやら年末年始の間ずっと見続けている夢らしいのだが、ここがある意味での物語の終着点で、実はその後も、二人はふたたびこの点に戻っていくのだ。決して一般にはハッピーとも思えないのだが、なぜか不思議な落ち着きを感じる。

しかし、物語がここまで長くなったのは、やはり現実の児童虐待の影響、後遺症がこれだけ長びく、ということを作者は示したかったのだろう。それに関しては十分に成功といっていい。