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ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結

前回のスーサイドスクワッドはそれなりに気に入ってた。が、今作を観て、あれはなんだったんだという思いが強く…非常に強く。最初からジェームズ・ガンにやらせとけばどんなによかったか。もったいない。あえて、前作のいいところを無理矢理拾う。そうあれがなければマーゴットロビーのハーレイクインは生まれなかった。だからよかったんだ。そう無理矢理自分に言いきかせていくしかない。そう思わせるほど、今作は最高。

今作のいいとこ。まず笑える。しかも血ドバドバのブラックなギャグ。に近い。ガンにデッドプールやらせても面白いかも。まあ第4の壁は越えないけどね。あとは場面ごとにアイテムでテロップを入れる執拗な遊びとか。で、さんざん笑わせて、最後感動させるからすごい。笑わせてるけど、実はテーマ自体は重いの扱ってんだよね。それに、キャラが全員立ってる。しっかりそれぞれに見せ場を作っている。この辺ではガーディアンズ・オブ・ギャラクシーでも見せてくれたガンの真骨頂か。

あとはネタバレつきで細かいとこ。デッドプールとの共通点。最初敵の島にチームアップで上陸したら、あっさり数分でやられちゃうとこ。「Xフォース」と同じ流れね。それに、クライマックスが怪獣映画なんだが(本編でも「カイジュー」って言ってる)これが意外にしっかり怪獣映画になってて感心した。

ジャスティスリーグ ザック・スナイダー・カット

この映画の欠点を先に言っておこう。

長い

以上である。あとはない。「ザックスナイダー」という形容詞がつくと、色々言いたくなる人がいるのはわかる。せっかくジョスウェドンが入ってうまくまとめたのに、なんでわざわざ梃入れ前のザックの版を4時間もかけて見なきゃならんのか。正直に言おう。私も観る前まではそう思っていた。ザックの「エンジェルウォーズ」はわりと好きだが、DCユニバースの作品は決して好きな方ではない。MCUの方がやはり好みである。そんな私だが、今回意外といい評判ばかりなので、うっかり鑑賞してみた。結果、「あれ?こっちのバージョンで別によかったんじゃね?ていうか、ジョスウェドン版とは何だったのか」という結論に。うっそー!?とお思いでしょう。これから説明するから。

本カットのいいポイントは、チームアップする各ヒーローのほりさげがしっかりできていること。これだけ長いんだから当たり前とおっしゃるかもしれないが、それで飽きさせないからいいんです。びっくりなのは、ワンダーウーマンにしても冒頭から見たことないバトルの(いい)見せ所がちゃんと来て、「あれ、こんなのも撮ってたの?」の連続。特にウェドン版では影が薄くなりがちだった、フラッシュ、サイボーグの新キャラもしっかり描いている。これは高得点。というか、映画全体を通して、ジョスウェドン版とのシーンの重複がほぼないように感じられる(もちろんちょっとはあるのだが)

あと、ザックの映画では画面もムードも暗くなりがちだが、今回に限っては、それがプラスに。ウェドン版はどうしてもMCUに寄せてる感が否めないのに対し、こちらは思いムードが伝説、神話寄りのDCっぽさを出していて、良かったと思う。

さて、ここまで成功したとなると、こっちの方の続きをぜひ見たいと思う訳ですが、どうなんでしょうね?

ハーレイ・クインの華麗なる覚醒

前作「スーサイド・スクワッド」で一人勝ちの人気となったハーレイ・クインのその後の話。なんか最近こういう映画多いよね。男に食い物にされた女の子が結束して男どもをぶちのめす映画。「ハスラーズ」もそうだし、「キャプテン・マーベル」もそうだったなあ。見てないけど、チャリエンもそうじゃないかな。このブームを後世の人は、「ブラックスプロイテーション映画ならぬ、ガールズプロイテーション映画」とでも(揶揄気味に)言うのかね。でも、そんなこといいじゃないかね。痛快なら。この映画の魅力を言葉にするのは難しいが、一言で言うならそんな感じだよ。あとすごく、色々語りたくなる映画。でも言葉にしずらい。なんだそりゃ。

この映画ではハーレイはジョーカーと別れて(なりゆき的に)様々な立場の女性とチームアップする。刑事、歌手、スリ、殺し屋…原題は「Birds of prey(猛禽)」っていうんだけど、DCコミックスで元々そういうシリーズがあんのね。で、歌手(ブラックキャナリー)や殺し屋(ハントレス)はそのメンバーな訳。ハーレイは違うみたいなんだけどね。だからこのチームは映画オリジナルなのかな。

で、ハーレイをメインにした新たなる物語を紡ぐとなると、ハーレイのオリジンみないなのも入れなきゃならなくなる。ジョーカーみたいにね。でも、その辺(出生から精神科医時代からジョーカーとの出会いから別れまで)は、ハーレイの独白ナレーションとアニメであっさり済ませた。この辺は長々なんなくて正解。その後も、観る前に心配してたようなところはだいたい、杞憂だった。序盤のポンポンポンとアクション飛ばして、「あれ、つながんない?」と観客が思った瞬間に逆再生が始まるとか、ラストシーンで突然画面が暗くなった時に、「う、これってザックの呪い?(死んでない)」と一瞬不安になったものの、これも杞憂。

ハーレイのキャラ付けは、「いい子になりすぎず、でも時々お茶目な魅力」というラインを守っている。これもいい。前半の警察署突入シーンは、ガンガン撃ちまくってるのが、なんていうの?突入の時に煙が出るやつで、「警察殺してませんよ」だし、(別のとこでは悪いやつはやっちゃったりするけど)。あと、結局カネのために仲間裏切っちゃうとか。絶妙のバランス。

あとは細かいところもいろいろ。マーゴット・ロビーがプロデューサーについてるせいかな?ハーレイがいつのまにかローラースケート乗り回してる(「アイ、トーニャのおかげ?」のとか、あとはバットだね。バットが出てきた時は「うおーっ」ってなったね。

ハーレイ自身の魅力では、前作と甲乙つけがたいところはある(初登場のインパクト大きかったし)。が、仲間もいいよ。ハントレス、ブラックキャナリーにモントーヤ、キャス。このチームでもう一作見たい。でもないかな?どうかな?

ジョーカー

最初の私のこの作品に対する期待度はそれほど高くなかった。「あー、今度は悪役シテンで1本作るのね。そういう観点もあるよね」といった、わりと冷めた受け止め方であった。若干アメコミ映画にも食傷してたのかも。加えて、今回は事前知識がどんどん入ってくる。特に、アカデミー主演男優賞レースでタロン君と一騎打ちだとか、ジョーカー役のホアキンはこういう基地に入れない役は十八番だからタロン君にあげるべきとか。私も先にロケットマンを観てそう思ったし。

といった、もろもろの設定されたハードルがあった訳だが、それらを軽く飛び越えてきたね。売り文句にもあるがまさに衝撃と言ってよかった。だいたい傑作の映画は、最初のシーンでだいたい分かるもの。今回も、最初にピエロのメイクをしているホアキン(アーサー)の横顔のアップがうつって、そこに描いたメイクの涙が垂れてきた時、私は確信した。とにかくこの映画は絵がいい。見たこともないようなゴッサム。ごみだらけなのになぜか美しい。で、ホアキン。私はそんなに彼の演技を見てきた訳ではないが、ちょっと凄いと思いましたよ、素直に。 この辺からネタバレだが、これ、冷静に考えてみればジョーカーにあまり理はないんだよね。 だって、いくら電車の客がイヤな奴だったり絡んできたといっても、殺されそうだったかどうかは分からないじゃん。でもいきなり殺しちゃったからね。そこを、アーサーの方を正当化するようにもっていく演技と演出。これを、現代にまさにマッチした格差の問題をからめて、ジョーカーをヒーローにまつりあげていく。もっていき方も見事。

主人公アーサーは、精神が不安定で、薬を何種類も処方されている。しかも、市の助成打ち切りで処方もストップ。ということは、この後は私大好きの、信用ならない語り手映画になっていく。恋人の件は、不幸なアーサーにしてはあまりにもうまくまわりすぎるので、どうもあやしかった。それに、バー?でアーサーが出演していて、最初まったく笑いがとれなかったのに、突然カットが入ったように客席の笑いが起きるシーン。そのことを敷衍すると、他にもあやしい点が。尊敬するマレー・フランクリンの客席にいたアーサーが声をかけられて壇上に上るシーンがあるが、これは確実に妄想くさい。なので、その後マレーのTVから出演オファーが来たのも、妄想ではないかと思った。

これ、いわゆるユニバースの流れに入れないからある程度自由に作れたのもよかったんだと思う。