コレクティブ 国家の嘘

このドキュメンタリーは、まず、ルーマニアのとあるライブ会場での火事のシーンからはじまる。このシーンも十分こわいのだが、問題はそこから展開して、この火事で病院に収容された患者が、軽傷者も含め異様にバタバタと死んでいるという事実に気付いたスポーツ新聞の記者が、調査をしていくという流れになっていく。すると実は、病院で使われている消毒液の濃度が、規定よりはるかに低い。しかも常態的にそうであることが分かってくる。これはこわいね。

それでなんやかんやあった後、現内閣が倒れ、テクノクラートからなる暫定内閣が発足。保健省大臣には、この問題を追及してきた人物が就任。これで問題が解決、と思いきや、ことはそう単純にはこばないのであった…これだけでも絶望的なのだが、これは事実だからネタを割ってしまうと、この後にあった総選挙で、事件当時の与党(社会民主党)がなんと、過半数に迫る票を獲得。要はこの問題がまったく世論にひびいてなかった訳で…これはどんなホラーよりも絶望的だよね。かつて、『はりぼて』を観ておちいった絶望感に共通するものがある。日本とて決して対岸の火事ではないはずであるし。むしろ、ジャーナリズム的には遅れをとっているかもしれない。

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