川崎フロンターレ2020

2020年のフロンターレについてここで語る機会がなかった。特に、思いおこせば2019年、2連覇して、複数タイトルを狙う年だったにも関わらず、リーグ戦のV逸など、結局ルヴァンカップ1つにとどまったこと(それでも十分すごいのではあるが)で、少なからず失望があったことも確かだ。特に、ホーム最終戦、マリノズに惨敗したのが後を引いていたに違いない。なので、キャンプでかなりいい感じと聞いていても、ルヴァンカップのグループステージを快勝しても、リーグ緒戦で例のごとく引き分けると、(今年はそこまで期待しないでおこう)と密かに心に思ったのも無理はない。

そうこうしているうちに、コロナ禍が襲来してリーグが順延になったこともあり、勝負よりも「リーグ自体どうなってしまうのやら」といった心配の方が先に立ったとしても、責められないと思いたい。

ところが、再開の試合(多摩川クラシコ)ではFC東京には快勝。次の難敵の鹿島にも、追いつかれながら勝ち越しで連勝。と、連勝街道をつき進むにつれ、「あれ?」という疑念から、「勝てるチームだ!」という確信に変わっていった。相手の最終ラインからのチェイシングに、はまってショートカウンターくらっているさまは、「え?さすがに後ろでまわしすぎなんじゃない?」と相手を気遣うくらい。横浜FC戦のように先行されても、どこか、「いつか逆転できる」という確信に近い安心とともに観戦できるように。これは、もちろん戦術としての安定度もあるが、順延による過密日程で、5人交代制になり、左サイドや中盤がダブり気味のうちに有利ということもあったかもしれない。特にシーズン前半は、後半頭から2人交代による攻撃のブーストが面白いほど決まっていたこともある。今さら言うまでもないが、このブーストに三笘の存在が大きいことも確かである。何度か、同点のままや敗戦で終わりそうなところを三笘のブーストで救ってもらったこともある。その12連勝めは奇しくも中村憲剛の誕生日。しかもその憲剛がバースデーゴール。チームはこのまま一気にいくかと思われた。

しかしその週末、また神様のいたずらか、新たな試練が。配信で憲剛が今シーズンでの引退を発表。「私中村憲剛は『川崎フロンターレ』を引退します」の冒頭の言には、現役をとか言わないところにワンクラブマンとしての矜持を感じるが、それどころではない。これはクラブにとって重大な事件だ。憲剛がいない間も連勝してたとか、そういう問題じゃない。私は憲剛のデビュー前からサポなので当然デビューから観てるし、今でも一番好きな選手だ。彼がフロンターレそのものになっていったからでもある。その想いは後輩となるチームメイトも同じだろう。あまりに重大すぎて、ことの重大ぶりがまだ飲みこめない私の頭に浮かんだのは、「次の水曜の試合(札幌戦)大丈夫か?」である。ひどい話だが事実だからしょうがない。そして、そんひどい予感は的中。前回対戦では6点とった相手にいいところなく敗戦。憲剛ショックなかった…とは言いきれない。その後、あと1試合勝てば優勝を決めれるというアウェイ大分戦で、なんと谷口が前年のルヴァンカップ決勝のデジャヴか?というレッドカード退場で、0-1と負け…しかもその翌日、2位のガンバが勝たなければ決められたのに、ガンバが粘って勝利。そのガンバと水曜に直接対決ときた。もう不安しかない。ここで崩れるのが今まで、数年前までのフロンターレ仕様。しかし、もう崩れなかった。崩れないどころか、ガンバを圧倒。初優勝の時と同じスコア、5-0で完勝。いや凄いね。数年前、シルバーコレクターと呼ばれていた時代。我々は鹿島の、なんかわからないけどやたら勝負強いところをうらやんでいた。鹿島みないになれたらと思っていた。でも今、自分たちのチームはもうそれをものにしていた。

優勝が決まってしまった後、フロンターレは簡単に勝てなくなった。アウェイ清水、鳥栖に連続引き分け。まあでも、普通ならgdgdになるところ、今年はいろんな記録更新がかかっていたので、それが幸いした。ホームの浦和戦で本来の姿をとりもどし、柏に絶望的に近いオルンガの点をくらいながらも逆転勝ち。強い。本当に強い。

そして憲剛の引退セレモニー後、その憲剛の最後の舞台となった天皇杯。実はJリーグのホーム最終戦、憲剛はフル出場していて、最終戦はベンチにも入らなかった。ある意味、あれがピッチとしては最後のステージだったのだと思う。もちろん準決勝にも途中出場してはいたが、短い時間だったし、我々も勝手に元日決勝、憲剛は最後の出場をすると思いこんで見守っていた。TV中継もベンチでアップする憲剛を映し続けていたが、出番が来ることはなかった。それでも憲剛がインタビューで、こんな最高の選手はいないと語ってくれたこと。ある意味、やはり彼はフロンターレと一体であったのだと思った。本当にこちらこそ感謝しかないのだが、あえてわがままを言うなら、今後もずっと何かの形でかかわっていてほしい。と言うまでもなく、かかわってくれると勝手に信じている。

さて、2020年のMVPは?ちょっと前までは、「三笘一択やろ」と思っていた。リーグ中盤のスーパーサブとしての機能ぶりが半端なかった訳だが、実は三笘を生かしていたのはノボリなんだなと、ノボリの欠場試合を見ていて思った。そういう意味では、家長と山根にも同じことが言えるのかも。

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