「ドラマ」カテゴリーアーカイブ

ロキ

せっかくディズニー+に入ったのでこっちも。

「ロキ」は、「ソー」シリーズに出てくるソーの弟で、オーディンの息子だが実は養子の、いたずらの神である。この設定は北欧神話そのまんまであり、ロキは神話においても、そしてMCUにおいても「トリックスター」な存在である。そして私はこの手の役の人に目がない。それだけでなく、MCUでロキを演じたトム・ヒドルストンが当たり役で、ロキ人気はこの人あってのものだろう。そんなロキだが所詮は脇役、であるはずが今回はドラマシリーズの主役。まあこれもディズニー+という場あってのものと言えるが。

このシリーズにおけるロキは、「エンドゲーム」で、四次元キューブを盗んで消えたバージョンということになっている。エンドゲームの物語上は、別の時間軸で、サノスと戦い死んだロキというのもいるのだが、そっちではない。そっちのロキはだいぶいい奴になってしまっていたが、そうじゃない方というわけだ。が、ドラマの主人公を演じる都合なのか、ロキ様は回を追うごとにどんどんいい奴になっていってしまう。それじゃ普通でいまいち面白くない。救いは、この世界に登場する人物の8割はロキの「変異体」ということになっている。やがて愛しあう女性版のロキもいたりするのだが、それってよく考えてみると自分自身を愛しているだけである。それを考えるとちょっとロキらしくてよい。対話もみんな自分の中での内省と考えれば、なんて自省的な話をやってるんだと、おかしくなってくる。ワニ版のロキなんてのもいたりして…

物語だが、時間軸を分岐させる「変異体」を取締るTVAという組織と戦う話になっている。そんな組織があるなら、エンドゲームのアヴェンジャーズなんか全員が取締り対象のような気がするが、なぜかつかまり「剪定」されるのはロキばかりのようだ。その辺を含め、謎は最終回でも終わらず、実はシーズン2に続くらしい…

ワンダヴィジョン

ディズニー+で配信されているマーヴェル・シネマティック・ユニヴァース(MCU)作品。噂を聞いて見たい見たいと思っていたのだが、何せ有料なもので…数ヶ月我慢して、ようやく時間がとれそうだったので、鑑賞。

このドラマの本質的な部分については、Youtubeのシネマ野郎チャンネル「てらさわホーク×御代しおり ぼんやりワンダヴィジョン」でほとんど語られていて、私が付け加えることはほとんどない。曰く、

  • このドラマはMCU映画見てる人前提
  • こえーよ。不気味
  • 時間が30分というのが丁度いい
  • MCUの今後にとって超重要な作品

ということだ。付け加えるなら、このドラマシリーズの前半は、アメリカのシットコム構成になっていて、客の笑いなどを入れつつ、とことどころに違和感を生じさせるものになっていて、(以下ネタバレ)これはワンダの妄想なのでは…?と気付く人は気付く展開になっている。特に、映画で既にヴィジョンが亡き者になっていることを知っている観客なら。それが早々に4話で明かされると。あとは、いかにワンダの妄想、というか現実改変能力を止めるかということになっていく。ワンダが何をしているかというと、町一つを住民ごと改変してしまって、自分の世界に住まわせている。住民にしてみれば否応なしにつきあわされている訳である。

ここまでのところからして、ワンダ、全然善人ではない。クライマックスでは、アガサ・ハークネスという適役が正体をあらわし、対決になるのだが、はたしてそれを通過しても正義のヒーローではないし、最後いいなりにさせてた住民にも直接謝ったりはせず、最後には逃げだしている。でワンダは先のアガサとの戦闘中に「スカーレット・ウィッチ」として覚醒しているのだが、最後の最後のシーンではその2つが分裂した状態で描かれる。先の御代しおり先生曰く、ワンダはMCU随一のメンヘラとして有名なんだそうで、これまでの映画シリーズでは描かれていなかった彼女の本質が、今回初めて描かれたということなんだろう。もっとも、これについては私は否定的ではない。そんな正義のヒーローばっかでもね。特に前半の現実だか夢だかが曖昧なところは私は大好物なので、それだけでもこの作品は推したい。

キャプテン・マーベルに登場したモニカ・ランボーが登場し、今後もシリーズに絡みそうなのもなんか楽しみである。

あ、この作品、謎はだいたい解決しているのだが、ただ一つ、ヴィジョンの遺骸をもとに再構成された白ヴィジョンは記憶を取り戻して出ていったが、その後どうなった?放置されていたけど、これも次のシリーズへの布石か。

アンナチュラル

伊集院光さんが、「今さらあまちゃん鑑賞」してるのに触発された訳でもないですが、その伊集院さんが以前ラジオではまっていた本作がこの年末年始で全話放送されていたので、録画してイッキ見した。結果、大正解。めっちゃ語りたいんですが、伊集院さんみたくウラシマ状態な訳です。仕方がないので、ここに書いていく訳ですが。

まずこれ、設定の勝利。ありきたりの刑事でもなく、科捜研でもなく、主人公まさかの法医学者。この視点が新しくてよかった。法医学者が犯罪捜査に積極的に関与するなんてあんまりないじゃないですか。それを、UBIという架空の組織を設定することでうまく解決。

あとは配役ですね。石原さとみ・市川実日子のコンビだとどうしても「シン・ゴジラ(2016年)」を連想してしまいますが、こっちのドラマの方が後(2018年)に作られているので、市川さんのキャスティングはこれ影響あったな、と邪推するものです。みんな大好き尾頭さんとはまた違う演技ですが、当たりです。

しかしなんといっても白眉は、私の一推し俳優、窪田くんでしょう。これは異論を待たないと思います。てか、一推しなのに見てなかったんかいと言われそうですが。この私が認めますが、窪田くん史上でも最高です。というかなんで自分以外の人でこんな窪田ファンいるのか理解できなかったけど、これのせいだ絶対。間違いない。窪田くんはコメディもこなすけど、本作の繊細なキャラの演技がすごくはまってます。だから自分はずっと六郎に感情移入していて、そのせいで最終回は予想された展開にも関わらず号泣。でもこの回の市川さんの演技もいいですよ。

前者の2人に比べると、石原さとみさんの演じる主人公はまったくキャラが立っていない。これは石原さんのせいではなく、逆に普通の人が入りこみやすくするための演出だと思いますが、シン・ゴジラのうさんくさい英語なまりの日本語を話すキャラとは対照的で面白いですね。

で、主題歌がlemonだったのね。このドラマにこの主題歌。最強でしょう。米津玄師のことは別に好きでも嫌いでもなかったけど、これで一気にはまり。まあ、そんなもんだよね。

ウォッチメン

今回、HBOドラマ版を鑑賞するにあたり、アランムーアの原作→ザックスナイダーによる映画→HBOドラマの順で鑑賞。原作が一番大変だったよ。ものすごく分厚い上に情報量も多くて。でもやっぱり読んどいてよかった。コンテキストとしてこれはあった方がいい。一方、ザックスナイダーの映画は、確かに、コミックのいろんなシーンを忠実に再現している。のだが、原作の重厚な内容に比べると、なぞってるだけ感が否めず。ラストも変えてるしね。原作者のアランムーアは映画と今回のドラマいんついてはどっちも認めていない立場らしい。しかし、映画はともかく、ドラマについては原作者の意見に関わらず面白い。私はAmazon primeスターチャンネルEXの無料お試し期間中(2週間くらい)で急いで全話観て、ネタバレOK状態となって町山さんの映画ムダ話やマクガイヤーゼミの解説を聞き、その結果、細々としたことが確認したくなり、もう一度観るはめに。でももう一度観てしまうと無料期間が終わってしまうのだが、有料突入は覚悟でもう一度鑑賞。何が言いたいかというと、それだけ面白いってことだ。

このウォッチメンは原作の続編で、現代を舞台にしている。だから原作の頃から30年が経過しており、例えばその時の登場人物であるオジマンディアスやローリーが歳をとって登場。両者とも非常に味のある演技で、この二人がいないとシリーズとしては無味乾燥なものになりかねなかった。が、主人公はその世代でははく、現代の現職・黒人・女性警官。これが今風だね。しかも、実際に1921年に起きたタルサの黒人大虐殺の生き残りの子孫ということになっている。この事件は知らなかったので勉強になったし、米国民にも認知されたのではないか。今年はこの事件を想起させる、警官による黒人の殺人事件が起きていたり、トランプ大統領がタルサで集会を開こうとしたり…このシリーズが放送されたのが2019年のはずなので、まるで今年を予期していたかのような先取り感である。(以降、ネタバレガンガンなのでよろしく)

とはいえ、ドラマの設定は今ではなくパラレルワールドということになっている。つまり、原作がパラレルワールド(例えば、ベトナム戦争に米国は勝利した)を引き継ぎ、現代ではベトナムが51番目の州になっているとか、携帯がなくて未だにポケベルだったりする。そして、覆面の白人至上主義者が跋扈しており、警官もプライバシーを守るため覆面をしている。そんな世界である。こんな設定ややこしくて説明するの大変だと思うのだが、ドラマでは非常にうまく説明していた。

そして、しっかり張られ、回収される伏線。もちろん全部ではない(回収しきれないのもある)が、これも私が2度見たくなった理由で、主人公の夫の名前がカルだったり(スーパーマンの名前「カルエル」のカルだ)、そのカルにローリーがモーションかけていたり(カルの正体は元カレであるDr.マンハッタン)。

シリアスばかりかと思えば適度に笑えるのもいい。3話だったかな?ローリーの登場場面で、おとり操作にひっかかって来る覆面ヒーローがバットマンそっくりとか。

音楽の使い方。80’s大好きなというか世代には、ハワードジョーンズやらWham!の曲がグッっと来るし、使い方にも意味がある。

9話構成だが、一番好きなのは8話。ここでは、主人公とカル=Dr.マンハッタンの出会いから今までが語られるのだが、時間軸をバラバラにした上、なんとタイムパラドックスを二人の愛のクライマックスに持ってくるという。こんなパラドックスの使われ方を私は知らない。すごい。脱帽です。