「映画」カテゴリーアーカイブ

VICE

ブッシュ政権の影のボスであることが公になっているという、それで影の意味あるのかという、漫画の悪役(VICE)を地でいくディック・チェイニーの伝記的映画。こういう映画にありがちな、悪く見えるけれども実は案外いい人でした、みたいな展開は…特になかった。実は心筋梗塞持ちでした、みないなエピソードもいまいち同情に結びつかないのは…やってることがひどすきるからですかねえ。

で、これもまた、キャプテン・マーベルなどと同様、一連のアンチ・トランピズムの流れの中の一作と言える。差別しかり同性愛しかり。本作は単に、共和党政権を扱っているということだけでなく、端々にそういったメッセージを入れている。ここ数年のこいったメッセージをこめた映画の機運は、少なくとも歴史には残るだろうが、後世の人はどうふりかえるだろうか。 もちろんメッセージ性だけではなく、笑いもふんだんに盛り込まれているので、ぜひ見てみてほしい。私は完全にこれはコメディだと思うし、実際たくさん笑った。場内で外国人と思われる観客だけ笑っている個所も多くあった。(ちなみに、予想以上に観客がいた。半分くらい埋まっていたかな?)まあ、文化による笑いのツボの違いもあるんだなとは思ったが、それを除いても世界共通でオモシロポイントはある。おすすめはブッシュだ。サム・ロックウェルの完璧なブッシュぶりも見事だが、私が思うに、ブッシュ(息子)の存在そのものがもうギャグなんだと思う。町山さんも言っていたが、こういう、実在の政治家を本人が存命中に(批評的にあるいはコメディ、ギャグとして)扱う映画なんて日本ではできないだろうなあ。そこはアメリカはうらやましいと思う。

さて、ここからはネタバレ全開でいきたいと思う(本作以外のネタバレもあるのでご注意)。構成として攻めてるなと思ったのは、「シュタインズゲート」のアレをやったことだ(シュタゲもネタバレしてほしくない人はここでさよなら)

アレとはアレです、フェイクエンドロールです。シュタインズゲート(ゲーム、最初のやつ)をコンプされた方にはおなじみ、バッドエンドのエンドロールの途中で、電話が鳴りそれがトゥルーエンドへの道につながるというやつ。私はここは「キター」って感じで笑わせてもらったが、まあ、未プレイとしても、チェイニーが副大統領にならずにハリバートンのCEOで人生を終えてる訳はないんで、ここは総勢で、「おいおい、そこで終わるはずないやろ!」とツッコむところですね。

エンドロール後に、途中で70年代にやってたはずのインタビューを受けてる人が突然ヒラリーやトランプの話をしだすという仰天展開があるのだが、これはこういうツッコミを想定して作ったメタ展開ね。こういうとこのセンスがいいと思う。

バンブルビー

ここのとこ目白推しのヒーロー映画の中ではもっも期待してなかったのがこれ。なにしろ、私の中でトランスフォーマーといえば、マイケルベイ。マイケルベイといえば、途中で寝てしまう映画。というイメージなのだから無理もない。それが、今回はスピンオフで監督が違うらしいと急に言われても。予告編を観ても、なんか今回は女の子が相手なんかなんかあざといなあという印象しか抱けず。ところが、聞こえてくる評判がいいもんで、ちょっと観てみようかという気に。おまけに先日、ニコ生のマクガイヤーゼミでトランスフォーマー特集があり、その中であまりにも出演者がおもちゃについて熱く語ったせいで、その中で紹介されたジェットファイヤーグリムロックを思わずポチってしまった。そんな少し興味が湧いた私が観た今回のバンブルビーは…

結局ハードルがあまり上がらなかったのもあるが、予想よりはずっとよかった。てか、ベイのじゃないトランスフォーマーってこんなにいいんだ!ベイ単位でいうと10000ベイくらい。なんだろうね。普通に変形の楽しさがあったり。愛があるせいかな。作りも丁寧で、安心して観れる。確かにあざとい部分はある。ロック少女(結局ロック少女だった)とオタクの組み合わせとか、またしてもの80年代ミュージック押しとか。ティアーズ・フォー・フィアーズはやりすぎ。そしてララランド、デッドプールに続き、またしてもTake on me。どんだけみんな好きなんだよ。しかしそれらはみんな映画の出来がいいので許してしまう。

(この先は一応ネタバレ注意)話は、E.T.だった。こんなにE.T.らしい映画はE.T.ぶりである。異星人を孤独な主人公がかくまうところ。だから皆にばれないようにするところでちょっとしたスリルが生まれる。地球の大人たちはみんな敵。主人公は親とうまくいってない。そして異星人は故郷の仲間に通信を試みる。しかし捕まり、一度は死んでしまう。で復活。最後は仲間がお迎えに来てお別れ。どう?似てすぎでしょう。ここまでやっても面白かったのでこれも許す。

主人公の女の子は、あざといけどナチュラルな感じでよかった。これもオタク向けで、途中でパツキンボディコンの女が嫌ーな役どころで出てくるのが、「俺たち、こっち側だから!」というメッセージ。

キャプテン・マーベル

例によってネタバレ注意。とりあえずは無難な話題から。

本作はIMAX 3D字幕版で鑑賞。ライブでお世話になっている水樹奈々さんが吹替を担当しているのを知ったのは、予約した後であった。まあ結論から言うとかなり良かったので、機会があればリピートしたいとは思う。

本作で一番よかった点は、主人公であるキャプテン・マーベル=ヴァース=キャロル・ダンヴァースである。具体的には、彼女のヒーローの武器である熱を表わす「輝き」この表現が非常にいい。ちょっとスーパーマンとかぶるところがある(地球外という出自やら、スーツやら)が、ザック・スナイダーのように全体を暗くするのではなく、ちょっと暗いところにまばゆい輝きの表現がすばらしい。それと、演じるブリー・ラーソン。初めて見たのは、「キングコング・髑髏島の巨神」で、一応キングコングの相手役だったが、これまでのコング作品のようにそこまでヒロイン然と扱われている訳でもなかったせいか、印象は薄かった。ところが今作ではその魅力が爆発。予告で使われるシーンは目が白目になるとこだったりして怖いのだが、それ以外のところはシュッとしていて、非常に凛々しい。

ストーリーの方だが、ちょっとした裏切りがある。まあこれまでに登場したパターンのうちの一つではあるのだが、単純に善悪で描くよりは深みを与えていると思う。導入部は、いきなり異星での戦争の場面から始まり、ちゃんとツカめるのかと心配になったがあ、杞憂だった。深みというより、これもまたトランプ政権に対する政治的メッセージがしっかり入っている。またかと思う人もいるかもしれないが、明確な適役が社会にいるお陰で、こんなポリコレなメッセージが込められた作品が量産されるのはなんか皮肉である。デッドプール2もそうだし、スパイダーバースもそう。ということはあれか。ハリウッド映画がこれからもいい映画を作ってもらうには、トランプ政権が続いた方がいい!?

スパイダーマン スパイダーバース

「未来のミライ」を押さえ、アカデミー長編アニメーション賞に輝いたので、そんなら見てみるかという軽い気持ちで3D鑑賞。マーヴェルものもアメコミも、実写映画は観るけどアニメははじめてだし。ところがこれが、予想以上に面白かった。ファーストマンとかもあったが、いきなり今年のベスト映画候補。何がいいのか?難しいな。ストーリーはいわゆる主人公のわりとまっとうな成長物語だし、絵作りは凄いけど、それが決め手とも言い難いし…あえて言えば、魂を揺さぶられるところ…かな。あんまりそうでもないところで涙が出てきてしまった。

後、感心したのは、これがいわゆる並行世界もので、一般にはなかなか受けない題材を扱っているにも関わらず、説明がなくても物語に入っていけるように工夫している点。映画に感動して、思わずコミック版「スパイダーバース」を衝動買いしてしまったが、読んでみたら全然違う話でコケたが、この原作?をそのままやるとキツいだろうなと思った。映画では、マイルス・モラレスとおっさんスパイダーマンをフォーカスして、うまく登場人物も整理して観やすくなっている。あと重要なのは笑いの要素ね。感動もしたが何度も笑かしてくれた。

唯一不満と言えば…日本のアニメ起源と思われるペニー・パーカーの作画が今いちなこと。こういうのはグリヒル先生(私が唯一読んでいたアメコミ「グウェンプール」の作画担当)にでもやらせればいいのに。

アリータ バトル・エンジェル

主人公の目が大きすぎ問題(何億ドル?もかけて加工する意味があったのかは疑問が残る)は、物語を観ているうちに慣れた。あと監督がロバートロドリゲス問題については、私はもともと好きな監督だし、そんなに気にはならなかった。ていうか、あんまりロバート・ロドリゲスの味はしない。ダニー・トレホもいないし(いなかったよね?)。やはりこれは巷で言われているようにキャメロンの映画なのかな。

映画は面白かった。私は銃夢は未読(実はあまり好きじゃない)なので、Dr.マクガイヤーのような、原作のどの部分がという観点では評価しない(できない)が、単純に面白かった。特にモーターボールでのスピード感はすごくいい。気になったのは、全体になんとなく漂う、古い表現感?例えば、アリータの決めポーズとか。

ファースト・マン

ファースト・マンは最初あまり観る気はなかったが、推す人が多いので観ることにした。結果大正解。予習してよかったと思うことはあまりないが、岡田斗司夫氏のニコ生は、聴いておいてよかったと思った。

この作品、やたら人物の顔アップが多い。それが、アクシデントの場面では非常に効果的。そのアップが生きるのは、表情での演技のシーン。特に、主人公ニールの奥さんの一挙手一投足が目に焼きついて離れない。この人なんでこん場面でこんな表情してるんだろう?と思ってしまう。実話でのこの夫婦のその後がどうなったかの情報は入れてしまっていたが、そのことがあって余計気になる。劇中の会話でもあったが、孤独というよりも、「普通でないこと」がいやになったのかなと思う。

アクアマン

今どき例を見ないどストレートの貴種流離譚だった。それ以上でもそれ以下でもない。ストーリー的には何ひとつ予想外のものはない。が、それへのキャラクターやアクションの味付けがうまいので、普通に面白く観られる。そんな映画。ちょっとびっくりしたのは、冒頭で主人公アーサーの母親が出てくるのだが、若作りで誰だかわからんかった…ニコールキッドマン。ところがこのニコールが大活躍なんだな。主人公と恋人役のいいシーンもあるのだが、基本は、父親、兄貴も含む家族の方がメインの話に思える。同じ貴種流離譚をベースにしたスターウォーズと同様、家族内戦争。

サスペリア

実はダリオ・アルジェント版も観ていなければ、ルカ・グァダニーノの前作「君の名前で僕を呼んで」も未見。そういえばやたら女子率が高かったのは、レディースデイということだけでなく、前作のせいか?まあホラーがもともとそんな好きでない私だが、それでも見に行こうと思ったのは、この作品について評価が真っ二つだとか、アルジェント監督が激怒してるとか、逆にタランティーノが絶賛してるとか聞いて、がぜん興味が湧いた。とにかく何か新しいものが観れるのじゃないかと。

鑑賞して…そうだな、期待していた何か新しいものが観れて満足。もちろん、観てよく分からないところがあり、「ヘレディタリー/継承」同様、再鑑賞したい作品である。最初、人間関係をつかむのに苦労。最初にクレンペラー博士を訪れたのは誰?(パトリシア)とか、田舎みたいなとこに寝てる女の人は誰?(スージーの母親?)とか。しかも、登場人物が嘘までつくから始末が悪い(ミセス・ブランって誰?と思っている時に、本人でない人間が「私がブランです」と宣言)。

物語の主要な部分であるダンス(ノイエ・タンツ)については、非情によかった。ここだけでも何度も鑑賞したい。

2018年ベスト映画

2018年に鑑賞した新作映画から、2017年にならいベストを決めてみよう。

  • 作品賞:「ボヘミアン・ラプソディ」
  • 監督賞:上田慎一郎「カメラを止めるな!」
  • 主演男優賞:ラミ・マレック「 ボヘミアン・ラプソディ 」
  • 主演女優賞:マーゴット・ロビー「アイ、トーニャ」
  • 助演男優賞:スティーヴ・カレル「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」
  • 助演女優賞:しゅはまはるみ「カメラを止めるな!」
  • 脚本賞:「カメラを止めるな!」
  • 撮影賞:「 ボヘミアン・ラプソディ」
  • 音楽賞:「ヘレディタリー/継承」
  • アニメ映画賞:「若おかみは小学生!」

んー。カメ止めとボヘミアン・ラプソディが席巻したな。この2作品は期待値の上回り度合いが頭抜けていたからなあ。

以下、面白かった順に並べてみる。

  • ボヘミアン・ラプソディ
  • デッドプール2
  • カメラを止めるな!
  • ブラックパンサー
  • アヴェンジャーズ インフィニティウォー
  • アイ、トーニャ
  • バトル・オブ・ザ・セクシーズ
  • シェイプ・オブ・ウォーター
  • スリー・ビルボード
  • ジュマンジ ウェルカム・トゥ・ジャングル
  • 全員死刑
  • ヘレディタリー/継承
  • 仮面ライダー 平成ジェネレーションズ FOREVER
  • ウィンド・リバー
  • アントマン&ワスプ
  • デトロイト
  • 華氏119
  • パシフィック・リム・アップライジング
  • ローガン
  • ジュラシックワールド/炎の王国
  • レディ・プレイヤー1
  • ヴェノム
  • 魔法少女リリカルなのは DETONATION
  • ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー
  • トゥームレイダー ファーストミッション

アントマン&ワスプ

なんと、前作「アントマン」を観てない状態での鑑賞。だから、設定等分からないところは多少ある。が、それはあまり気にしなくてもいいようになっている。わりと軽めの内容で、面白く観れた。最後は、ちゃんと「アヴェンジャーズ:インフィニティウォー」につながるようになっている。