1917~命をかけた伝令

ワンカット(に見える)撮影というのと、予告編を見てちょっと魅かれたのと、撮影がロジャー・ディーキンスなので鑑賞。IMAX2D。

結論としては、満足。地獄めぐり体感映画として。ワンカットなのかどうかはそこまでこだわってもしょうもないのかもしれない(逆に、「あ、ここでカット切り替えてるのでは?」という箇所ばかり気になったりして…)が、うまくつないでるのは確か。あと、明らかにワンカットではなかった(ネタバレ?)。撮影は、「これどうやって撮ってるの?」というワンダーな、かつ美しい印象に残る絵。すばらしい。後で聞いたところほとんどがセットなのだそう。びっくり。私が好きなのは御都合主義的、複葉機がつっこんでくる(予告でも使われたのでこりゃネタバレではない)シーンや、夜の燃える教会?。ストーリーはまあ、後からついてくるようなもので。これが事実とかけはなれてるとか、個人的にはあまり気にはならなかった。

主人公の心情が最後まで分からない点もそんなに。興味を引っぱるという意味ではそっちの方っがいいのかもなと思うし、友軍のトラックが音もなく突然出現するシーンも。なんでだろうね。

ミッドサマー

アリ・アスター監督の映画は、「ヘレディタリー/継承」に続き2作目。ストレートなホラーにあまり魅力を感じない、どこか醒めてしまう自分には、この監督の作品は心に効くホラーで、珍しく怖い。最も前作は終わりが「え?なんか唐突」と違和感を感じてしまったものの、今作、「(色調が)明るいホラー」という文句に魅かれて行った訳ですが、どうだったか。

結論から言うと(珍しく今回はあまりネタバレしないです)、なんだろうこのイヤな感じ。イヤなミステリーを「イヤミス」と言うなら、本作はまさに「イヤホラ」。今回も、心理的にイヤ。何がイヤかって、宗教的なといってもいいけど、共同体にとりこまれていく感じ。抵抗も敵わず。どんどん洗脳されていくし、逃げ場もない。宗教も信じず(正確にはFSM信者だが)、個人主義を貫きたい筆者にはこれが堪える。心に響いたものの、二度と観る気にはなれないのだ。正直に言うと、数分記憶が飛んでいる箇所があり、改めて見直したい気もないではないのだが、嫌な気分がそれを上回る。

スキャンダル

といえば、ケリー・ワシントンのドラマだよねえ。原題は、”Bombshell”で、「爆弾」と「かわいこちゃん」と2つの意味がある。これは両方かけているけど、さすがにそのままでは伝わらないと思ったんだろうね。映画の中では、メーガンケリーがこう呼ばれていた。

この映画は、FOXニュースの社長のセクハラを、セクハラされた女性の立場から描いた映画と予想して観たら、 FOXニュースの社長のセクハラを、セクハラされた女性の立場から描いた映画 だった。そのまんまかよ。そのまんまなんである。つまり予想通りではあるが、以上でも以下でもないということ。それは実名で出す告発のフィクション映画は日本では決して作れないし、主演のシャーリーズセロンやマーゴットロピーやアカデミー賞のメイクアップのカズ・ヒロはすばらしいが、それは最初からある程度分かることで、なんというか、サプライズがないんだなあ。シナリオ的にも演出的にも。決してつまらなくなないけど、なんかこう、もうちょっと欲しい感じ?

最悪のシナリオ

先日、とあるミステリー小説を購入。「意外な結末」というふれこみで、巻末が袋とじになっているもの。最近の読書は電子書籍がほとんどな私だが、さすがにこういうのは難しいかね。ところが後々最悪のシナリオ展開をみせる

  1. 買ったその日に風呂場で読んでいたところ、眠りこんで水没。あわてて乾かしたのでかろうじて読める状態ではある(袋とじも無事)が…悲しかった
  2. 出張先のホテルで、袋とじ直前まで読んだあと寝てしまい、そのままホテルに忘れてくる
  3. 実は、その前にAmazonで買っていた
    この本、袋とじのまま返品すると、買ったお金を返してくれるらしい。ある程度本気のようである。水没した時点で既に私は2冊目を注文していたのだが、これには以下のようなもくろみがあった。
    1. まず水没してない新しい方で袋とじ直前まで快適に読む
    2. 次に水没の方の袋とじを開封して最後まで読む
    3. そして、水没してない、袋とじを開封してない本を返品しお金を返してもらう
      これだったら、本の購入代金は1冊分ですんだはず。ところが、ご存じの通り、水没本はホテルに忘れてきたので、結局新しい方だけで袋とじを開けてしまうほかなく、結局これについては2冊分のお金を払っている勘定に…
  4. 結末が結局袋とじ前に予想した内容ほぼほぼ同じ
    ここまで来た私だが、まだ逆転の手は残されていた。それは、「結末を予想した上で、開封せずにそのまま送り返す」だ。それはそんなに非現実でもなく、直前まで読んで、私には1つの解答が頭に浮かんでいる。ちょっと勇気を出せば、封を切らずにいけたはずだ。そう、自分に自信さえ持てれば…だが、もう覆水盆に返らず…

ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密

原作なしミステリー物って、ネタバレを心配しないからいいよね。それに監督が「最後のジェダイ」のライアン・ジョンソンだし。ということで、大いなる期待を胸に抱き観に行った訳です。
…結果、結果…うーむ。
とりあえず、いくつか言いたいことあり。
このあと、基本ネタバレですのでよろしく

基本構成としては、そんな悪くない。最初は倒叙ミステリと思わせて実は…という、確か倒叙基本のコロンボとかでもあったパターンではあるけど、それはいいんですよ。問題は、倒叙で最初に疑われた娘が、最終的に殺人は犯してませんでしたっけことだけど、「結果的にやってない、だからセーフ」ってことにはならないと思うんですよ。探偵が彼女のことを「善良善良」いうけど、そこまで善良?自分が殺人犯したと思ってもそのことは黙ってるし、隠蔽工作もしてるじゃないですか。本当に善良ならまず最初に罪を告白するし、それ以前にこっそりでも救急車呼ぶでしょ。なんなのあいつ。それにゲロ。嘘をつくとゲロはくって設定だけど、それでバレないようにめっちゃ必死になるじゃないですか。それに、嘘ついてからゲロまで、結構時間差あるって、ずるくない?(設定が)。しかも何度もその手使ってるし、ずるくない?

遺産の件にしても、遺言のままだったらあの100歳超えほおばあさんはどうするの?そこも見過すのが善良なの?てことなんだわ。で、あいつ、キャプテンアメリカ。あいつがあやしいの見え見えだしね。あーもう、言いたいことばかり溜まるストレスによくない映画でした。

パラサイト 半地下の家族

本作はハジメ、スルーする気でいた。時間もとれないし、他にも見たい作品あるしで。ところが、本作がアカデミー賞作品賞など6部門にノミネートされ、それだけでなく、「めちゃくちゃ面白い」という評判ばかりが聞こえてくるに至って、「これは見とかねば!」となり、先日TOHOシネマズ日比谷で鑑賞。

で、感想だが、「めちゃくちゃ面白い」。語彙が貧弱?だって、山里さんも宇多丸さんもそう言ってたでよー。何が面白いかというと、まずは笑い。本作は貧乏人が金持ち一家に家族ぐるみ雇ってもらう(家族ではないふりをして個別に)話で始まる。その「騙し」の過程がなんともおかしい。おかしい以上に驚いたのは実は、ジョーダン・ピール監督の「アス」とほぼ同じ構造を持っていること。これは似てる似てるという話は聞いていたが、びっくりするぐらい同じだよね。ポン・ジュノ監督も知らないで作っていて、驚いたらしい。が、話の出来でいうと、こっちの方が100倍いい。何がいいかというと(そろそろネタバレ)、笑い以外にも、観客が、こうなりそうな予感。でもなったらやだなーと思っていると、やっぱりそうなるんかいーみたいな展開。これはエンタメのツボをしっかりおさえている。例えば、金持ちがキャンプに行っている間に、ニセ他人の家族がその家で酒盛りをしていて、しかもわざわざ「こうしている間に主人たちが突然帰ってきたりして」と言うとそれがほんとうになるような展開。あるいはソン・ガンホの父親が最後にとる行動が、唐突のようで、それまでにシチュエーション的にはその種をまいてあり、徐々に臨界に近づくところを見せている点。また、アイテムの使い方がうまい。たとえば雨。突然の雨は不吉の予兆、つまりこれから起きる「地下の住人の発見と格闘」や、「主人一家の突然の帰宅」のしるしでもある一方、主人公たちが帰ってみると、その雨の洪水で半地下の家が水没してるとか。あるいは石。主人公が大事に持っている石は「なんとなくこれで殴ったら人殺せそうだな」という印象を観客に与えておき、おっと実はというちょっと裏切った展開。うまい。

本作は作品賞ノミネート。アジア初だそうである。鑑賞してからなら自信を持って言えるが、作品賞とってほしい。最悪脚本賞や監督賞はとってほしいな。ポン・ジュノといえば私が観たのは「グエムル」程度で、当時はうっすら「パトレイバーのパクリ」といった印象しか残ってないが、ちょっと見直してみたくなった。

テリーギリアムのドンキホーテ

まだパラサイトも観てないのに、最近はまっている伊集院光さんがテリーギリアムのドンキホーテ観てきたというのを聞いて、「あやばい」と思い慌てて観に行った。行ったのは職場近くのkino cinema横浜みなとみらい。この映画館は最近できたのかな?わりと小さめの箱だったので、前で鑑賞した方がいいかもしれないが、椅子などはちょっとリクライニングできたりして、やっぱり新しい感じ。

で、感想ですけれども、「できてよかった」という安心が一番。ギリアム監督は押井節と同じで、わりと同じテーマをまわしたりするじゃないですか。このドンキホーテはわりと観る前から、なんとなく「バロン」や「フィッシャーキング」系だと予想していて、結果予想通りだったというのもあって、そこはまあ期待通りではあったものの、この作品ができた経緯も含めて見直すと、伊集院氏が言うように、その経験すらが作品の中に投影されていて、「ドン・キホーテ」が完成しなかったことを映画にした「ロスト・イン・ラ・マンチャ」までおっかけていた、そしてもう二度とドンキホーテをおがむことはないのかと半ば絶望していたギリアムファンからすれば、やはり感慨深いものがある。

この辺からネタバレです。物語はバロン系なので、夢と現実をいったりきたりする。油断してると、「あれ、これって夢だっけ?」となる。それと、ギリアム作品で重要なのは笑いで、ところどころギャグをはさんでくる。モンティ・パイソン的に一番来たのは、スペインで異端審問?という流れで、「スペイン宗教裁判!」のネタを想起させてくれること。

ところで、この映画を観てから、wikipediaのこの作品の項を見てみると、制作過程が予想以上に艱難辛苦であったことが書かれており、益々「よかったあ〜」という思いを強くさせる。

あ、この作品でもアダム・ドライヴァーよかった。もうすっかりファンかも。で、この作品は、いわば継承の物語な訳ですが、同じアダム・ドライヴァーが出てるスターウォーズEP9よりか、やっぱこっちがいいよねえ。

フォード vs, フェラーリ

この話、ル・マン24時間のフェラーリの牙城を崩そうと挑戦するフォードチームの実話だそうだが、これって実際には個人のたたかいの話だからさ、実際にはむしろ、シェルビーvsフォードみたいな話なのに、どうしてこんな表層的タイトルなんだろうね。ちなみに原題もそのままなんだよね。

で、この話「ラッシュ」が好きなら観るべき!とさんざん言われて、相当ハードルが上がった上で鑑賞したが、ハードル超えてきたね。いきなり男どうしの殴りあい。ヒドゥンか!これがよかった。マットデイモンもいいが、クリスチャンベールの演技がよかったなあ。で、カーレースシーン。CG使わない!気概をしかと見た。迫力あるね。結構怖いなと思ったのは、デイトナのバンクのシーンや、テストコースをビュンビュン攻めるあたり。確かに、これをやられると「ラッシュ」あたりはかなわんなあと思う。

2019年ベスト映画

昨年同様、2019年に観た映画をまとめてみよう。

観た本数はそれなりにあるが、いわゆるアート系は少ないなあ。やはりアメコミ中心にB級もりだくさん。

まずは各賞から。

次は面白かった順。このブログで未紹介のもある。

  1. ジョーカー
    やっぱり今年最大の衝撃だった。
  2. ロケットマン
    ジョーカーが食るまではNo.1だった。
  3. スパイダーマン スパイダーバース
    ロケットマンが食るまではNo.1。
  4. アベンジャーズ/エンドゲーム
    キャプテン・マーベルと迷ったが、祝完結ということで。
  5. キャプテン・マーベル
  6. サスペリア
    何か魅かれるものがある。踊りかな
  7. 仮面ライダージオウ Over the Quarzer
    メタなところが私このみ。
  8. ジョンウィック パラベラム
    一張羅アクション。
  9. 工作 黒金星(ブラックヴィーナス)
    主人公二人の表情が泣かせる。緊迫感も
  10. ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド
    やっぱりタラちゃん
  11. X-MEN ダークフェニックス
    評価低いが私は好きだよ
  12. スパイダーマン ファー・フロム・ホーム
    よくがんばりました
  13. ゴジラ キング・オブ・ モンスターズ
    これも評価低いが腐っても巨神兵じゃないゴジラ
  14. アス
    ちょっとトンデモな感じだが、ルピタ
  15. バンブルビー
    オーソドックスに面白い
  16. アリータ バトル・エンジェル
    私を今さら木城ゆきとに目覚めさせた
  17. アクアマン
    たたかうニコール
  18. VICE
    アイロニー。あとブッシュがいい
  19. i —新聞記者ドキュメント
    インパクトがあまりないが、よい
  20. ファースト・マン
    ダークな宇宙もの
  21. RBG 最強の85才
    RBG。
  22. ハウスジャックビルト
    ナチ礼賛自虐煉獄風立ちぬ映画
  23. 愛がなんだ
    んーなんだ。岸井ゆきの
  24. ダウンサイズ
    予想してたよりはいい
  25. 魔法少女リリカルなのは DETONATION
    予想してたよりはいい2
  26. ファインディング・ドリー
    予想通り
  27. スターウォーズ スカイウォーカーの夜明け
    んー。んー。そうかあ。

さよならテレビ

東海テレビの平日夕方の報道番組「ONE」を同局スタッフが裏側から描くドキュメンタリー仕立ての映画。「さよならテレビ」なんて挑発的なタイトルをつけられては、やはり観に行きたくなってしまうというもの。私と同じことを考えた人がいたのか、ポレポレ東中野の20時の回は(鑑賞料金1000円の日だったとはいえ)130人の超満席状態で、ざぶとんやパイプ椅子が登場する事態に。

で、映画の冒頭は、その裏側から描く目的がふわっとしているので、撮られる側だけでなく観ているこちらもなんとなくいらいらする。そんな中、監督は3人のスタッフに密着していくことにする。自分に自信がなく、しゃべる時間もきっちり決めないと気がすまない福島アナウンサー、自称、「ぜひネタ(スポンサーなどからぜひにと言われて放送するネタ)」が得意というノンポリっぽい澤村、派遣社員で要領の悪そうなドルオタの渡邊君。それぞれが、追っていくうちにキャラクターのいい味を出していく。渡邊君は笑わせキャラをずっと出しているのだが、他の二人は自分の今のポジションに悩み、抜けだそうとあがく。その姿を追いつつ、監督は報道の抱える問題を暴こうとする。働き方改革で残業カットと視聴率向上で板挟みの管理職、報道は権力のチェックを柱に挙げつつ、やってることは食レポだったり、どうでもいいネタだったり、結局日和ったり..。それにどこにでもある派遣社員の問題とか。

で(そろそろネタバレです)、ドキュメンタリーなのにキャラが立っていて見やすいけど(立たせ方がいいのか)、なんか問題はとっちらかっているなあと思っていると、最後に澤村さんが、カメラ目線で、「この映画何がしたいの?終わりはこれでいいの?」と問いかけだす訳。すると、突然カットバックになって監督が演者に演出をつけている、というかキャラ付けや編集してるといったことを見せていく訳。ええええー?と驚くよね。じゃあ、今までのはどこまでが本当でどこまでがフェイクなの?これはいわゆるやらせなの?途中で放送事故とかあったけどあれもフェイクなの?と一気にこっち、疑心暗鬼になる。で、ここまできて、はたと「あ、これが監督の意図か」と気付く。まあ、そういう映画です。

by morota