カメラを止めるな

世間の評判が大変によいので、それに押されて「とりあえず見てみるか」という、消極的な動機で鑑賞。
都内2館しか上映していないのに、連日、どの時間も満席らしい。たまたま、夕方少し早めに新宿K’s cinemaに行けたので、チケット購入。上映1時間ほど前だが、そんなに大きくないのに既に整理番号70番台。本当に人気。
しかし結論としては、見てよかった!し、他の方にも自信を持っておすすめしたい。これは誰かの受け売りだが、「伏線満載の三谷幸喜コメディ好きに特におすすめ、そして三谷作品よりできがいい」。
ここからはネタバレごめん。
この映画、予備知識なしで見ることができたがそれも大きい。もちろん、複数回見ることが前提の作品ではあるのだが、皆が「ネタバレしないように」気を使っているように、やはり初回はなしで見た方がいい。私の予備知識といえば、「30分以上ワンカット撮影の『ゾンビ映画?』」。だから最初はそのワンカットに注目して観る。「ふんふん、ほんとにワンカットなんだ。うまく撮ってるな」なんて感心したり。ただ、そのうちにちょっとずつ違和感を感じるように。それはちょっとした不自然な間だったりするのだが、役者がアマチュアなのか演出がまずいのか、笑いをとりにいってるのかいないのか、微妙な感じなのだ。後になってみると、すべて狙いだったことが分かる。前半部分で、一部の観客に「え、ここでそんなに笑う?」というリアクションがあったのだが、再見の客だったんだな。ようはこれらは全部伏線だった訳である。つまり、ワンカット・ゾンビという作品が終わったあとに、その種明かしが始まるという訳だ。しかも確実に笑える。なんかすべてが奇跡的ともいえる演出。
後半は、前半のワンカットを別の観点(カメラ)から見直している、ように見える。見えるだけで、実際には取り直してるんだろうが、結構再現度が高いので、そうは思わせない。
唯一、不満があるとすれば、ここに親子の相克と和解みないな、若干見飽きたテーマをからませてるとこ。最後はここがメインでちょっと感動したりするのだが、瑕疵といえる瑕疵はそんなとこか。

アイ、トーニャ

「トーニャ・ハーディング」と聞けば、すぐに「ナンシー・ケリガン襲撃事件」という言葉が連想できる、それが我々の世代である。といっても、事件の細かい部分や背景についてそれほど知っている訳ではない、なんだったらこの映画で出てきたように「トーニャが直接、ナンシーをフルボッコにしたとみんなが思っている」、それが我々の世代である。この映画はそんな我々の世代向けに作られた、訳でもないのだろうが、最終日に行ったら観客はそんな世代の人達ばっかりだった。

この作品は主演のマーゴット・ロビーが自らプロデューサーを努めてまで、やりたかった作品だという。作品を作るにあたって、トーニャ側の主要人物に徹底した取材を行った。その結果、ナンシー側の視点からの描写はなく、事件までの経緯はほとんどトーニャ側の観点で描かれる。トーニャ側といっても、トーニャと元夫の発言には食い違いがあるが、それもそのまま描いている。視点は偏ってはいるが、決して客観性を失った訳ではない。事件そのものにしても、「トーニャは100%イノセント」なんて描き方はしていなくて、むしろ「え?その会話をしてる脇にトーニャいたの?じゃあれとあのことは少なくとも知ってたよね」ということを暗示し、客を一方向に流して安心させないようにしている。

が、しかし、この「物語をほりさげる」ことで、スケートシーンの凄さ(これはCGも使っているが、マーゴット自身の演技もかなり入っている)が活きてくる。最初にトリプルアクセルを決めた大会の興奮や、リレハンメルの決められた失敗に向けたどうしようもない緊張感を、観客は共有することができる。今年の映画のあらゆるアクションの中で、随一の出来といっていい。エンドロールでは本人によるトリプルアクセルの映像が出てくる。こちらを出すことで、あらためて本人の凄さを観客は知ることになる。うまい構成だ。

アカデミー助演女優賞を獲得した母役のアリソン・ジャネイの演技が評価されている。彼女の冷血な演技もいいが、マーゴットも負けていない。単純な善玉悪玉でない役、でもどうしようもないホワイトトラッシュの役、といった複雑な演技を完璧にやりきった。彼女が演じたトーニャのキャラは、確かに一部では嫌われそうではあるが、一方で、例えばフィギュアスケートが体現しているような既成概念に対する反逆者でもある。ZZトップの曲にのせて踊りだす彼女を、当時もう少し上の年齢だったら好きになっていたと思う。

デッドプール2

デッドプール2、IMAX2Dで鑑賞。今回もネタバレ満載です。
前作は、メタなセリフとアクションで楽しめたが、今回はメタ台詞もあるにはある。がそっちはむしろ、「アイ、トーニャ」にまかせてもよくて、山盛りに盛り込まれたパロディ、風刺ネタがよかった。今回はタイムマシンがガジェットとして出てくるのだが、最初は制約を設けてあえてやりすぎないようにしている。ヒロインは序盤でいきなり殺されてしまうが、失った家族をとりもどすという敵(ケーブル)のかかえる問題は、そのままデップーの抱える問題にもなる。が、それはタイムマシンで安易な解決にすることなく、あるべき形に落ちついている。(タイムマシンは行きと帰りで1回しか使えないし、クライマックスで使いきってしまいケーブルは家族のもとに戻れなくなる)

と、こんな形で終わったら普通の映画になってしまうので、エンドロールでは、タイムマシンが修理されてしまい、デップーはさっそく恋人を救いに時間をさかのぼってしまう。それだけではなく、過去の「ウルヴァリン」でのしょうもない登場をしたデップー(自分自身)を殺してないことにしたり、「グリーンランタン」の主演をひきうけようとしたライアン・レイノルズ(自分自身!)を殺したりと、1回完結のギャグマンガのような、次でリセットされそうな暴走。これが楽しかった。次作ではどこまでがリセットされるのやら。結局この流れで恋人は生き返りそう?

それにしても、初日に行ったのだが、ウルヴァリンやグリーンランタンのくだりで爆笑が起きていた。なかなか濃い観客揃いなので感心した。

アベンジャーズ インフィニティウォー

もういきなりネタバレしていいですか?
「ガチ全滅」って、全滅じゃないじゃん!
アベンジャーズの最新作、宣伝で「ガチ全滅」言ってたので。まあその気持もわからなくはないが。
アベンジャーズ、更にメンバー増えてる。しかも、シリーズの各作品をおさえてないとなかなか厳しいところもあって。
私で言うと、「ブラックパンサー」は見たものの、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー・リミックス」や「マイティソー・バトルロイヤル」は見逃してるので、なんか知らないキャラがいるとか、ソーがなんで片目なんだとか、微妙に疑問な点はある。
とはいえ、アベンジャーズの基本線をおさえていれば、気にせずについていけるレベルではある。

それより、これだけキャラが増えたにも関わらず、しかも多すぎるので、メンバーをチームに分割して分割したチームごとにプロットが平行して進むという、一歩間違えばカオスになりそうな展開であるにも関わらず、意外にもとっちらかっていないで、集中して見れる。しかも各キャラに見せ場をちゃんと用意してるのが凄いよね。

更に凄いのが、今回悪役のサノスというキャラ。最初はただの悪役かと思いきや、彼なりに筋の通った正義感をしょわせ、しかも非情のキャラとみてておいて、いきなりのどんでんがえし(やや唐突な感は否めないが)。なかなかハリウッドでは珍しい。

しかし、今回最高のビックリは、そのラストだ。絶対秘密にされてきたそのラストとは、「全滅」ならぬ「半滅」。しかも宇宙の人類がランダムに。アベンジャーズもそのあおりをくらい半滅、したところでいきなり物語が終わる!そうきたか〜

この先の展開はしかし、ある程度読めなくもない。続編は決まってるし、だってアレをアレするアレがあるでしょ、だから…なのだが、おどろいたはおどろいた。

レディ・プレイヤー1

スピルバーグがオタクオヤジを接待!(以下既にネタバレ有)
メカゴジラやらガンダムやらが出るということで、オヤジの期待は盛り上ったが、結果、期待以上でも以下でもなかった。ストーリーも意外性はそんなになく、おさまるところにおさまった印象。先週からパシフィックリムでこの手の接待されてるのもあり、やや食傷気味?スピルバーグなだけにウェルメイドなのだがねえ。

パシフィック・リム アップライジング

見た!
かつて前作に対してライムスター宇多丸師匠が、「怪獣と巨大戦闘ロボアクションを見せてくれるだけで200億点出てるんです。そこからいくら細かいアラでさし引こうが200億点には変わりない」とのたまったが、まさに本作にもこれがあてはまる。最初にマイナス面を述べる。実はこれ、自分にとってはそれほど瑣末ではない。それは菊池凛子さんのことだ。(以下、ネタバレするので注意)
前作マコ役から出ている凛子さんが、前作よりオトナの女性になっていて、かなりよかった。よかっだだけに、途中退場してしまった時は本当に悲しかった。後で、わけのわからないシャオ社の女性で出てくるやつが、後の方でかなり重要な役回りを演じていたが、「映画秘宝」の対談でDJオショウが言っていたように、あれ別に凛子さんでよかったんじゃね?と思う。
あとは、ハリウッド映画の定番、終盤の舞台である日本の表現がなんかおかしいというのもある。しかし!そんなことはやはり、ロボ戦闘アクションに比べれば大したことではない。今回、IMAX 3Dで見たが、まさに「これこれ!」という感じ。しかも今回はロボ同士の対戦もあり、前作よりも更に興奮度がパワーアップ。
その他では、主役のジョン・ボイエガ君。あのスターウォーズのフィン君である。今回はフィン君とはだいぶ違う、しっかりした大人の役だったが、見事にこなしていて関心した。「デトロイト」にも出ていたが、彼はどんどんよくなる。楽しみな役者だ。
本心は、あと1回は見たいのだが、「レディ・プレイヤー1」「アベンジャーズ」も続々控えており、実現するか…

トゥームレイダー・ファーストミッション

トゥームレイダーのリブート。
前シリーズは当時わりと好きだったのだが、こうして新作の鑑賞後では、あれはなんだったのか感満載になってしまうのを止められない。ゲームの世界観とかの再現性では、圧倒的にこちらの方が上。遺産の話とか、冒険に出るまでも、本作の方が自然。
話も手堅くまとめてある。ここまでは、褒め言葉。しかし、この作品には致命的な欠点が…
絵が暗すぎるのだ!暗所のシーンではほとんど何も見えない!戦闘もなんかやってるぽいまでしか。他のところはよくできていただけに残念だ。

ブラックパンサー

2度見に行った。面白かったからではなく、初回の時は半分以上寝てしまったから。
2度めは、なんとかほぼ落ちずにすんだので、ようやく流れを把握。なにしろ、初回の時は、最後で「なんでブラックパンサーが二人いてたたかってるの????」だったからだ。
しかし、その印象はまんざら間違いではない。それは、二人の衣装が似通っているからだけではなく、この映画では、あえて「正義対悪」の構図は薄くして、ヴィラン側のキルモンガーにもそれなりの大義を与えているからだ。これは、言うなれば「X-MEN」のプロフェッサーXとマグニートーの関係に似ている。
それ自体は悪くないのだが、アクションとしての盛り上りはわりと中盤のカーチェイスあたりにあったのではないか。終盤でCG使いまくりだとなんだか、ワンダーウーマンとかザックスナイダー的だ。
それ以外では、脇を固める強いお姉さんたちはもちろん、地面が割れて、滝ができた後に人々が出現するあたりの映像はなかなかよかった。

コクソン/お嬢さん

韓国映画はあまり見ない方だが、この2つは気になっていたので、親不知で入院の際にまとめて鑑賞。
コクソンの方は、監督のふりまわしにすっかり幻惑され、1回観ただけではちょっと分からなかった。國村準が何者で、誰が正しいのか、というあたり。この辺は後で解説を聞いて、ああそうかと。ちょっとダマされたけど、そんなに気分は悪くないような。悪魔が憑依したような女の子の演技は、まあエクソシストなんかのパターンなんだろうけど、こわかった。

「お嬢さん」の方だが、これはねえ…。近い話をどっかで観たような気がするが、必要以上にエロい、そしてどんでん返しといえば、思い出すのは「ワイルドシングス」か。しかしこっちはもっとアジア的にねっとりしている。構成もワイルドシングスよりは迷走せず、こちらの方がずっといい。気になるといえば、主人公たちの使う変な日本語くらい。

シェイプ・オブ・ウォーター

この作品はアカデミー賞発表前になんとか時間を作って鑑賞して、スリー・ビルボードと争っていた作品賞予想をここに書こうと思っていたのだが、すっかり機を逸した。私はシェイプ・オブ・ウォーターに軍配を挙げた訳だが、今となっては後出しじゃんけんでしかない。
私がシェイプ・オブ・ウォーターを作品賞に挙げる理由は美しい絵と音楽のマッチング。そして、「好きになれる作品」ということ。
話については、スリー・ビルボードのような意外性はない。ラストにしても、どこかである話とも言える。下敷きになっているのは「人魚姫」だろうし、全体としては「E.T.」に近いと思った。、悪役がなんかもっさりしているので少々いらいらするが、そんなのは些細な要素にすぎない。

この話に関連して、先日町山智浩さんの映画塾を聴きに行った時に衝撃の事実が発覚した。(この先デタバレ注意)
映画塾のネタは「ラ・ラ・ランド」「ムーンライト」だったのだが、最後にアカデミー賞関連の質問コーナーがあって、質問者が「イライザの首の傷みたいなのは結局なんだったのか」と訊いたら、町山さんが「それは○○だからだよ!」ガーン!そうだったのか。私も、質問者と同じく、最後○○がでてきたのは、半魚人の力のせいと思っていた。イライザが口がきけないこととか、すべてつなぎあわせればわかるはずなのに…

by morota